[感想]白い犬とワルツを/テリー・ケイ

 白い犬とワルツを (新潮文庫)

白い犬とワルツを
テリー・ケイ著(兼武進 訳)/新潮文庫
お薦め度:★★☆☆☆

長年連れ添った妻に先立たれ、自らも病に侵された老人サムは、暖かい子供たちの思いやりに感謝しながらも一人で余生を生き抜こうとする。妻の死後、どこからともなく現れた白い犬と寄り添うようにして。犬は、サム以外の人間の前にはなかなか姿を見せず、声も立てない―真実の愛の姿を美しく爽やかに描いて、痛いほどの感動を与える大人の童話。あなたには白い犬が見えますか?(文庫裏表紙より)[原書:To Dance With the White Dog


翻訳出版されたのが95年、文庫化されたのが98年。ともにさしたる話題にならなかったのだが、書店員さんの書いたPOPが元で、ここに来てじわじわと売れ始めたのが、この「白い犬とワルツを」。

ちなみにPOPの文章は、
『妻をなくした老人の前にあらわれた白い犬。この犬の姿は老人にしか見えない。それが、他のひとたちにも見えるようになる場面は鳥肌ものです。何度読んでも肌が粟立ちます。“感動の1冊”。プレゼントにもぴったりです!!』
というもの。

サイト内でも何度となく宣言している通り、ハッピーエンドでない小説は好きではない。

そんな私にとって、この作品は苦味が強すぎた。たしかに不思議な白い犬は登場するが、だからと言って「大人の童話」と表現されるほど、ふわふわとした甘っちょろい作品ではないし、ましてや爽やかな読後感と世間で言われている理由が、さっぱりわからなかった。

なるほど、妻に先立たれた老人が余生を生き抜こうとするその姿は潔い。
彼に寄り添う白い犬の姿も暖かい。

けれど、物語のそこここにあるのは、うんざりするほどの現実だ。ついつい自分自身の祖父母や両親、夫、子供のことが頭に浮かび、できることなら心の奥底に沈めておきたかったあれこれの記憶が、心の表層に浮かんで来てしまう。

現実逃避と言われればそれまでだが、私にとっては、決して心地よい読書ではなかった。