[感想]翼はいつまでも/川上健一

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翼はいつまでも
川上 健一 著/集英社文庫
お薦め度:★★★★★

青森県の中学三年生、神山は補欠の野球部員、平凡な生徒だ。ある日米軍放送で聴いたビートルズの「プリーズ・プリーズ・ミー」が彼を変えた。聞き覚えてクラスで歌い彼はクラスで認められた。多恵からも声をかけられ初恋の思いを抱く。夏休み、さまざまなトラブルが彼を襲う。でも彼には仲間がいるし、ビートルズがくれた勇気もある。「本の雑誌が選ぶ2001年度ベスト1」「第17回坪田譲治文学賞」受賞。(文庫裏表紙より)


大人のための青春小説

想い出はいつも美しいの言葉ではないですが、自分の中学時代を今振り返れば、それなりに輝いていたような気がしないでもありません(消極的)。ですが、窮屈な学生服に身を包み、規則にがんじがらめになっていたまさにその時「あぁ、輝いている!」なんて実感した記憶、実はあんまりありません。「輝かなくちゃ」と無理していた記憶ならありますけど。

本作「翼はいつまでも」はうすらぼんやりとした記憶の中の中学時代を、ものすごく輝いていたかのように追体験させてくれる素敵な物語です。

読んでいるうちに、あちらこちらで、そういえばそんな感覚確かにあったな、そうだそうだ、今思えば楽しかったな、夢持ってたな、希望に満ちてたな、ビバ・青春!

実際に体験したことがあったかのような気になって、作品世界と自分の記憶とを重ね合わせ始めたら最後、もうこの作品の虜です。

そういう意味では、中学生が主人公の青春小説でありながら、実際には大人が読んだほうがよりいっそう楽しめるはずです。

340ページの決して大長編とはいえない作品の中にぎっしりと詰め込まれた青春の想い出。

力づくで生徒を押さえ込もうとする横暴教師、父への反発、野球部の活動に熱中する日々、仲間、親友、性への好奇心、そして初恋。

なかでも主人公の神山が自分自身を見直すきっかけともなるビートルズの名曲「プリーズプリーズミー」が、最初から最後までこの作品を引っ張っています。

何から何までもが上手くまとまりすぎている感がありますが、いいんです、それでこその青春小説なんですから。

10年ほど前の作品ではありますが、まだ読んでいない方はぜひ一読を。熱烈お薦めの一冊です。