[感想]煽動者/石持浅海

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煽動者
石持 浅海 著/実業之日本社
2012-09-20
お薦め度:★★☆☆☆


変則的なクローズドサークル

初めて読む石持浅海さんの作品です。

反政府組織のテロリスト「V」。テロリストなどと言うと何やら穏やかではありませんが、このVは、流血や暴力行為は一切行わず、水面下でじわじわと現政府への不信をあおって行こうとする無欠主義。

活動そのものも緩やかで、時折週末に組織から招集がかかるものの、あくまでも自分の予定優先。予定があれば行かなくてもかまわないという鷹揚さ。

主人公の『春日』こと片桐も、普段は普通のサラリーマン。軽井沢の施設に招集がかり、そこで政府転覆のための「兵器」アイデアを他の仲間たちと討論しているところに、殺人事件が発生します。

大雪が降っているわけでもなく、鍵がかかっているわけでもなく、別段閉じ込められる要素はないものの、テロリストの活動拠点のひとつである施設での殺人事件ということから、警察には通報することができず。加えて、入出管理の厳しい施設でのこと。おのずと犯人は絞られて来る結果に……。

物理的にではなく、状況的に完成される変則的なクローズドサークル。

本来ならワクワクしそうな設定なのですが、なぜか読んでいる最中も気分がさっぱり高揚して来ませんでした。

文章のせいなのか、ストーリーのせいなのか、とにかくテロ活動だとか殺人事件だとか、物騒な題材があるわりにはさっぱり緊迫感がないのです。登場人物たちの動揺や不安はしっかりと描かれてはいるのですが、それがこちらにまで上手く伝わってこず、結果、物語の中にのめり込むという状況は、ついに最後までおとずれませんでした。

動機についても何だかなぁ、という感じですが、それよりも何よりも、極限状態の緊迫感がもっと上手く描けていたならと、クローズドサークル好きの自分としては残念でなりません。

何とでも解釈できる意味深なラスト1行が、本作で一番印象的なシーンだったかもしれません。