[感想]ソロモンの偽証 第3部 法廷/宮部みゆき

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ソロモンの偽証 第III部 法廷
宮部 みゆき 著/新潮社
2012-10-11
お薦め度:★★★★★

事件の封印が次々と解かれていく。私たちは真実に一歩ずつ近づいているはずだ。けれど、何かがおかしい。とんでもないところへ誘き寄せられているのではないか。もしかしたら、この裁判は最初から全て、仕組まれていた―?一方、陪審員たちの間では、ある人物への不信感が募っていた。そして、最終日。最後の証人を召喚した時、私たちの法廷の、骨組みそのものが瓦解した。(「BOOK」データベースより)


久々に宮部ワールドを堪能。満足の1冊!

第1部、第2部と続いて来た「ソロモンの偽証」もいよいよこれで最終巻。

この第3部を読み終えたら、ここ数ヶ月の楽しかった読書時間が終わってしまうのだな、とやや感慨にふけりながら、読み始めた本書。

第2部の続きの証拠集めから始まるのだとばかり思っていたら、いきなり学校内裁判の開廷日から始まり、すぐに心を鷲づかみにされました。なんとなれば、この1巻、まるまる法廷シーンでしめられることになるのです。

中学生が取り仕切る学校内裁判。

ややもすれば陳腐な設定になりがちな難しいこの場面を、いったいどのように宮部さんは描くのだろうと、実は多少不安に思うところもあったのですが、そんなこちらの思いなど軽く飛び越えて、722ページの長丁場を乗り切ってしまうなんて。やはり宮部さんは常人ではありません。

中学生があんなに難しい言葉を使えるのか、裁判なんかできるのか、といった意見もちらほらと見えますが、むしろあの場でいかにも中学生らしい言葉遣いで裁判を行っていたならば、それこそ学校内裁判そのものが安っぽくなってしまったはずです。

たしかに、判事の井上くん、検事の藤野さん、弁護士の神原くんの3人にいたっては、これが本当に中学生か?と思うほどのスーパーぶりを発揮していましたが、物語に厚みを加えるためと思えば、十分許容範囲に思えました。

また、言葉遣いや行動が大人顔負けであっても、中高生の頃の、子供でもない、ましてや大人でもない、不安定な時代の心の揺れを上手く描きだしていたため、実のところ、私個人としてはこの3人にほとんど違和感を覚えることなく読み進めることができました。

全3巻をついやして書かれた本書は、ストーリーの大まかな落としどころが中盤あたりかじわじわと想像できるような流れになっていて、ミステリーとしては弱いかもしれません。

けれどそれを補ってあまりあるメッセージ。

生きなければいけない。

たとえ今が辛くても。生きる意味なんかないと思えても。生まれて来なければ良かったと思っていても。

俺が生まれてきたことの意味を見つけるのは、俺自身だ。<つまらん人間>の一人として、俺は自分で自分を見つけていこう。

この言葉に、すべてが集約されているように思います。

夏休みの学校内裁判を通じて、そこに参加した生徒たちは、それぞれにそれぞれの思いを抱えて、ひと回りも、ふた回り大きく成長しました。この作品がもしもミステリでないとするならば、中学生の成長物語と見ることもできるのかもしれません。

だからといって、大人が読んだら面白くないかと言えば、決してそんなことはありません。

大人は大人なりに、日々の生活に迷い、悩んで、時には自信を失いながらも、なんとか踏ん張って、日々の生活を送っているのですから。

宮部みゆきさんの本作「ソロモンの偽証」は、ミステリという枠組みを超えて、読んだ者にふんわりとした優しい希望を与えてくれるとても素晴らしい作品でした。

お薦め♪