[感想]D列車でいこう/阿川大樹

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D列車でいこう
阿川 大樹 著/徳間文庫
お薦め度:★★☆☆☆

廃線が決定したローカル鉄道を救いたいと、退職した上に会社を創ってまで田舎町にやって来た三人組―才色兼備でMBA取得の女性ミュージシャン、良心的な融資を誇りにしてきた元銀行支店長、そして鉄道オタクのリタイア官僚。最初は戸惑っていた町民たちも、次々繰り出される彼らの奇抜な計画に、気づけばすっかり乗せられて。なぜか再建を渋る町長の重い腰は、果たして上がるのか。(文庫裏表紙より)


面白けれど何かが足りない

もう一度何かに打ち込んでみたいと願う50歳すぎの中年男性ふたりと、男社会の中でなかなか頭角をあらわせずにいる優秀な30代女性ひとり。

この3人が力を合わせて赤字ローカル路線の再建に取り組む話は、確かに興味深く、その成り行きが気になって本書を一気に読み終えました。

ええ、そうなんです。つまらないわけではないんです。読み手をひきつけて離さない「何か」がこの作品には確かにあります。

それにもかかわらず、最後まで登場人物たちに感情移入することができませんでした。主人公である河原崎慎平が、自分とは性別も違う50代の男性だからなのかとも考えましたが、そういうことでもなさそうです。本当に魅力的な小説は主人公がたとえ小学生だろうと、80すぎのおじいちゃんだろうと、きちんと感情移入することができるはずです。

紅一点、MBAホルダーの深田由希は、人当たりも良く、仕事もできて、なおかつ美人。勝負服にはミニスカートをはくこともある才色兼備の自立した女性――、ここまで来ると、なんだかなぁ、と思ってしまいます。あまりにも紋切り型。男性がいかにも考えそうな女性の理想像です。

そんなこんなで、登場人物たちは皆、夢に向かって一生懸命なのですが、どうしてもそこにリアリティを感じることができませんでした。

彼らの考え出すプロジェクトも、どれもこれもがどこかで見たようなものばかりで、しかもそれがすんなりと上手くいってしまう。

私自身は、基本的にハッピーエンドが大好きで、ハッピーエンドのためならば、多少のご都合主義でも許せてしまうほうなのですが、今回はダメでした。

ご都合主義というよりも、物語そのものに厚みを感じることができなかったのです。

面白いのに、面白くない……、う~ん、なんという微妙な読後感。

ちなみに、Amazon.co.jpのカスタマーレビューでは、★4つを獲得しています。きっとわかる人にはわかる作品なんだろうと思います。