[感想]翻訳夜話/村上春樹・柴田元幸

120103

村上春樹と柴田元幸の共著ということで、とても贅沢な内容の本になっていると思います。が、この本を読んで何を感じるかは、その人の立場や考え方次第なのでは?という気がしました。

私は翻訳家でもなければ、翻訳の勉強をしたこともないので、翻訳にまつわる苦労というものが、一般常識的範囲内でしか理解できません。ましてや、良い翻訳・悪い翻訳の区別などつけられようはずもなく。ただ、翻訳書を読む上では、やはり喉ごしがいいというか、ひっかかりがないというか、そういった訳文に出会うと心底ほっとします。でも、それを突き詰めて行くと、世間ではあまり評判芳しくない「超訳」というものが、一番優れているということになってしまうという可能性もあるわけで、この辺の判断が難しいところなわけです。

で、素人ながらに思うには、村上春樹ってのは、それほど名翻訳家なのだろうか、ということ。この疑問が、この本を読んでいる間中、ずっと頭から離れませんでした。個性を出来るだけ排除し、テキストに忠実に訳文を起こす。それはわかるんです。けれど、彼の訳文を読んでいると、理解できない表現に出くわすんですね。表現というか、文脈が理解できないといったほうがいいでしょうか。ぶちぶちと文章が切れてしまっているような印象を受けてしまう。原文のせいかな、と思っていたんですが、今回改めて柴田訳のカーヴァーを読んでみると、これが見事に分かり易い。これならもっとカーヴァーを読んでみたいと思わせるだけの何かがある。

一番好きな作家は誰?と問われれば、間違いなく村上春樹の名前をあげる私なのですが、こと翻訳に限っては、どうしても彼の訳文を好きになれません。

まぁ、とにかく。そんなこんなで、訳者としては圧倒的に柴田元幸を評価しているものですから、6:4あるいは7:3くらいの割合で村上春樹が前面に出てしまっているこの本に、何か釈然としないものを感じる結果となってしまいました。

お薦め度:★★★☆☆