[感想]硝子のハンマー/貴志祐介

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硝子のハンマー
貴志 祐介 著/角川文庫
お薦め度:★★★☆☆

日曜日の昼下がり、株式上場を間近に控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓には防弾ガラス。オフィスは厳重なセキュリティを誇っていた。歌詞カメラには誰も映っておらず、続き扉の向こう側で仮眠をとっていた専務が逮捕されて……。弁護士・青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む。日本推理作家協会賞受賞作。(文庫裏表紙より)


前半と後半で変わる視点に違和感

子太郎に「絶対に面白いからとにかく読んで」と薦められ、ドラマで大野智さんが演じていることもあって読み始めた貴志祐介さんの「硝子のハンマー」。

すでにドラマも4回見終えた後なので、作品中に青砥純子と榎本径のコンビが出て来るたびに、彼らが戸田恵梨香さんと大野智さんの声や立ち居振る舞いに脳内変換されてしまい、何とはなしに落ち着かないまま読み進めることとなってしまいました。

中途半端に先入観があるため、どこまできちんと本作と向き合うことができたのか、正直あまり自信がありません。それでもあえて言うならば、期待ほどには面白いと感じることができなかった、といったところでしょうか。

密室の謎に挑む青砥と榎本。

あらゆる可能性をひとつずつつぶして行くために、推理をしては失敗し、推理をしては失敗しを何度となく繰り返えします。

あまりに失敗を繰り返すものですから、物語にさっぱり勢いがつきません。まるで各駅停車に乗っているかのようで、面白くなったか……と思う次から勢いがそがれてしまうのです。

また前半は主として青砥と榎本の視点で物語が描かれているのに対し、後半は一転。犯人の視点から物語が描かれます。

犯罪に至るまでの経緯が、自身の生い立ちを含めて語られて行くわけですが、犯人の過去がわかることによって物語に深みが出るどころか、反対に語れば語るほど、その心理が薄っぺらいものになって行きます。

更に、犯人の語りの中で密室のトリックが暴かれてしまうため、探偵役であるはずの榎本の活躍が少なくなってしまい、推理小説独特のカタルシスを感じることができませんでした。

トリック自体はよく考えられていて、防犯に関する知識も驚くほど豊富。青砥と榎本のコンビにも味があり、所々には笑いのポイントも。にもかかわらず、何となく消化不良気味の読後感となってしまいました。