[感想]謎解きはディナーのあとで/東川篤哉

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謎解きはディナーのあとで
東川 篤哉 著/小学館
お薦め度:★★★★☆

「失礼ながら、お嬢様の目は節穴でございますか?」令嬢刑事と毒舌執事が難事件に挑戦。ユーモアたっぷりの本格ミステリ。(「BOOK」データベースより)


通勤電車や病院待合室のお供にお薦めのユーモアミステリ

かつて、もうずいぶん昔の話ですが、OL時代に片道2時間をかけて通勤していました。始発駅から乗るので、座席を確保することはできるものの、ぎゅうぎゅう詰めの車内は、もうそれだけで圧迫感のある息苦しいような空間でした。

そんな時に頼りになるのが、面白い本。時間を忘れて、先へ先へとページをめくりたくなるような、そんな本をいつも探していたような気がします。間違えても純文学的な、人生を考える本であってはいけません。もっと痛快で、爽快で、一瞬自分がどこにいるのかを忘れてしまえるような、抜群の吸引力を持っている本。

東川篤哉さんの「謎解きはディナーのあとで」は、出来ることならその頃の自分に手渡してあげたいような本です。6つの短編からなる本作は、短いがゆえに気軽に読み始めることができます。推理に関してはやや作りが粗いようにも感じますが、短いページ数の中に事件と謎解きがしっかりと詰め込まれていることを考えれば、十分及第点でしょう。

そうして何より全編に漂うユーモアのセンス。

主人公であるお嬢様刑事の宝生麗子と、確信犯的天然キャラの執事影山。この二人の軽妙なやりとりが作品全体を楽しい雰囲気に仕立てています。作品に厚みがないという意見もあるようですが、それでこそのユーモアミステリだと思いますし、安定感のある東川さんの文体は、安心して読むことができます。

ただ、ひとつ難を言うならば。

わざわざ単行本で読まなくてもいいかな、というところでしょうか。軽妙さこそが命のこの作品。通勤電車に最高であるからこそ、文庫という形態のほうがふさわしいように感じました。これから買おうかどうしようか迷っている方は、文庫が出るのを待ってからでも遅くはないかもしれません。